村上の歴史 第11回。漆山神社と漆
村上市蒲萄[ぶどう]峠の漆山神社は『延喜式』所載の式内社で、地元では矢葺[やぶき]明神とも呼ばれます。江戸時代の漆奉行や、うるしの日の参拝まで、市と観光協会の案内でたどります。
知る歴史 提供なし(自主取材)
第10回では、奥三面[おくみおもて]遺跡群と縄文の里・朝日をたどりました。朝日の山あいに残るもうひとつの歴史の糸として、今回は漆[うるし]の名を冠した神社と、村上の漆産地の話を取り上げます。
蒲萄峠の式内社、矢葺明神
市によると、漆山神社[うるしやまじんじゃ]は古来、名にしおう蒲萄[ぶどう]峠の途中にあり、境内は最も神さびたところである、と紹介されています。『延喜式』[えんぎしき]の式内社[しきないしゃ]であり、地元では矢葺[やぶき]明神とも呼ばれます。所在地は村上市蒲萄字矢吹、というのが市の案内です。
市のページには、康平[こうへい]年中に源頼義[みなもとのよりよし]・義家[よしいえ]父子が北狄征討の役を終えて凱旋の帰路に当社へ詣で、余った矢で社殿の屋根を葺いたので矢葺明神ともいわれている、という伝承が載っています。伝承であり、史実としての裏付けはこの記事では確認していません。市のページには、安産の神として近郷の信仰が深い、ともあります(信仰の紹介であり、効能を述べるものではありません)。
観光協会のスポット案内でも、旧朝日村の蒲萄峠に鎮座する漆山神社は『延喜式』所載の「漆山神社」であり、地元では矢葺明神と呼ばれる、とあります。行き方や旧道の状態はこの記事では扱いません。
漆奉行と、朝日・山北の漆
観光協会の村上木彫堆朱[ついしゅ]案内(2017年掲載)によると、江戸時代、村上城主は全国でも珍しい「漆奉行」を置き、村上を天然漆の採地として管理し、漆の生産を産業として奨励した、とあります。 市の「村上市歴史的風致維持向上計画」も、村上堆朱の項で、歴代村上藩主が漆工を奨励して漆奉行が設置されるなど、漆樹栽培が活発になった江戸時代、と記しています。「全国でも珍しい」「採地として管理」は観光協会の案内の書き方で、市の計画にはありません。 古くから朝日・山北地区では漆の生産が盛んだった、というのが同案内の書き方です。一時期は全国一の産出量を誇るとまでいわれていた、とも書かれていますが、数字の裏付けはこの記事では確認していないため、産出量の順位は断定しません。
社名に「漆」を持つこの神社は、そうした漆の産地と結びついて語られてきました。市のページが引用する『朝日村史』(旧朝日村時代の記述)には、朝日地区唯一の延喜式内社であることのほか、社名の示すとおり一千年前から漆液産地の中心であり、その支配勢力者の根拠地は神社を中心にした集落だったろう、とあります。これは村史の書き方で、年代の推定や産地の規模については、この記事では断定せず、出典の言い方の範囲で紹介します。
うるしの日と明神岩
観光協会の案内(2017年掲載)によると、毎年11月13日の「うるしの日」には、村上木彫堆朱の職人らが漆山神社へ参拝します。他県の漆関係者が訪れることもある、というのが同案内の紹介です。現在の実施状況は確認していません。
社殿の背後には明神岩[みょうじんいわ]がそびえます。市のページは、江戸時代の紀行『東遊記』[とうゆうき]に橘南谿[たちばななんけい]が蒲萄の漆山神社と岩穴・絶壁を記していることなどを、『朝日村史』の引用とともに紹介しています。明神岩の高さについて、『朝日村史』は「直立百メートル」で「今も」立つと記しますが、市の別の資料(歴史的風致維持向上計画)は高さ約50メートルとしています。測り方は出典に書かれていないので、この記事では高さを断定しません。観光協会も、赤い鳥居の向こうに小さなお社と、背後に屹立する巨岩・明神岩が見える、と案内しています。
つづく。次回は、青砥武平治と種川の制を取り上げます。
出典
出典・開示
開示区分 提供なし(自主取材)
出典は、本文の最後の「出典」にまとめています。
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- 村上の歴史 第2回。村上藩、堀氏から内藤氏へ続く城下の歩み
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